犬と暮らしている家のにおいは、住んでいる本人がいちばん気づきません。
これは犬舎をやっていると痛いほど分かることで、来客に指摘されて初めて気づく、ということが起こります。
トイレまわり、ケージ、犬の服、車の座席、雨の日に乾ききらなかったマット。
においは一か所から出るのではなく、布と樹脂に少しずつ溜まっていきます。
その「におい」に正面から取り組んでいる会社があります。
青森ひばの杜(株式会社tappi.lab)さん。このたび、いぬsotodays の協賛としてご参加いただけることになりました。
先日お時間をいただき、商品のことをひととおり伺いました。その内容をまとめます。

青森ひばという木のこと
青森ひばは、秋田すぎ・木曽ひのきと並んで日本三大美林のひとつに数えられる樹木です。
成長が非常に遅く、内地では青森県を中心とした一帯にしかまとまって生えていません。
特徴的なのは、虫が寄りつかず、腐りにくいという性質です。
そのため樹齢は数百年におよび、寺社建築や土台材として長く使われてきました。青森県の県木でもあります。

この木がもともと自分の身を守るために持っていた成分を取り出したのが、「ひば精油」です。
ヒノキチオールをはじめとする成分が含まれています。
消臭や防カビ、虫を寄せつけない働きのもとは、ここにあるとされています。
捨てるはずの「おがくず」から採っています
もうひとつ、伺っていて感心したのが原料の出どころでした。
精油を採るために木を伐っているのではなく、製材のときに出るおがくずを使っています。本来なら捨てられる部分です。

においを「消す」のと、上から「重ねる」のは別のことです
消臭を名乗る製品はたくさんありますが、中身は大きく2つに分かれます。
においの元に働きかけるものと、強い香りで覆うものです。
後者が悪いわけではありません。
人の生活空間では、それで十分なこともあります。
ただ、犬がいる部屋では少し話が変わります。
犬は嗅覚受容体の数が、人よりはるかに多いことが知られています。
人が「ちょうどいい香り」と感じる濃度が、犬にとっても同じとは限りません。
強く香らせるほど良い、という考え方は、犬の側から見ると必ずしも成り立ちません。
MASHUU シリーズが選んだのは、成分を足さない方向でした。
アルコールやグリセリンなどの添加物を使わず、安全性試験をクリアした処方。
成分表示は、青森ひば精油と精製水です。
開発元によれば、香りでごまかす製品ではないとのことでした。
においの原因になっている物質そのものに働きかける設計だそうです。
香りが薄れたあとに、においだけが戻ってくる感じがしにくいのは、そのためだと聞きました。
使う量についても、「まずワンプッシュ、それで足りなければもう一度」という説明でした。
一般的な消臭スプレーのように、何度も吹く前提の製品ではありません。見た目の価格ほど減りは早くない、という話です。
虫が寄ってこない理由は、2つある
虫よけについては、仕組みが2通りあると教えていただきました。ここは面白かったので、そのまま書きます。
- 虫が嫌う香りで遠ざける — ダニやカメムシなど、ひばの香りそのものを避ける虫に対して働きます。犬の寝床や布類に吹いておくタイプの使い方です
- 虫を呼ぶにおいを分解する — 蚊やアブは汗などのにおいを頼りに寄ってきます。そのにおいのほうを分解してしまう、という考え方です。生ごみに集まるコバエも同じ理屈になります
散歩の前に、犬の体や服、人の足まわりに軽く吹いておく。それでしばらくのあいだ、虫が寄りにくくなるとのことでした。
※ 虫よけの対象は衛生害虫ではありません(公式サイトの記載による)。
精油と水を混ぜるのに、4年かかった
ここが、いちばん面白いところです。
油と水は、そのままでは混ざりません。
だから多くの製品は、アルコールや界面活性剤、グリセリンといった「混ぜるための成分」を足します。
逆に言えば、添加物を減らすほど、混ぜる技術が要る。
青森ひばの杜が成功したのは、青森ひば精油と水を混ぜ合わせることそのものです。
アルコールもグリセリンも使っていない、と公表しています。
どのくらい細かく分散させているかというと、飲む牛乳に含まれる乳脂肪分と同じくらいのサイズだそうです。
だから白く濁って見えて、置いておいても分離しません。
粒の大きさは調整できます。ただ、いまの大きさがいちばん消臭に向いていることを、実験で確かめてあるそうです。
細かくすればいい、という単純な話ではないようです。
この技術を「100年越しの夢である独自の『ナノ分散製法』」と表現しています。
もともとは、消臭剤ではなかった
次はこの製品が生まれた経緯です。
もともとは、ひば油を使ったコーティング剤を手がけていた。
コロナ禍でアルコールが手に入らなくなったとき、代わりに使えるのではないかと考えた。
そこで、コーティング成分を抜いたものを作った。
それを知人に配ったところ、「消臭がすごい」という声が次々に返ってきた。
そこで初めて調べてみたそうです。精油と水を混ぜるという仕事は、100年ほど誰も成功していない領域でした。
道の駅から、生ごみ処理場まで
犬用品の会社ではないので、使われている場所の幅が広いのも特徴です。
- 青森県内の道の駅に、半数以上にあたる16か所ほどで置かれています。会社は川崎にあります。
最初は「ひば製品ならたくさんある」と断られることもあったそうです。
ただ、実際に商品を試してもらうと採用に至ることがほとんどで、道の駅のスタッフにもファンが多いとのことでした。 - 生ごみ処理プラントの消臭剤コンペで採用されています。
近隣からのにおいの苦情への対策です。
他社製品より価格は高かったものの、現場の判断で選ばれたとのことでした - 川崎市内のキムチ専門店でも使われています。
開発の4年のあいだ、濃度の調整に協力してもらった相手でもあるそうです
犬のにおいより手ごわい現場で使われている、というのは、判断材料としてわかりやすいと思います。
ラインナップと、選び方
いくつか種類がありますが、犬と暮らす人が最初に手に取るなら、基本のマルチスプレーで足ります。

- マルチスプレー(100ml 1,500円/300ml 2,900円)— 基本の1本。消臭・防カビ・虫よけまで、ひととおりこれで足ります
- for PET(100ml 1,700円/300ml 3,400円)— ひば精油の濃度を高めたタイプ。猫の多頭飼育や、入浴のむずかしいシニア犬など、においが特に強い場面向けです
- 置き型消臭ゲル(1,900円)— 玄関・トイレ・靴箱・冷蔵庫など、置いておく場所用。6畳あたり1つで4か月ほどが目安とされています
- ヒバユノモト〈入浴剤〉(500ml 4,700円/50ml×3本 1,650円)— 人用の入浴剤ですが、薄めて犬のすすぎに使う方もいるそうです
興味深かったのは、濃いほうを積極的には勧めていないことでした。
「ノーマルで十分です」とはっきり言われます。
会場に並ぶのも基本のマルチスプレーです。for PET が要る場面かどうかは、相談したうえで判断する、という考え方だそうです。
置き型ゲルについて1点だけ。減っていく途中で、白い結晶が出ることがあります。
これは原料の塩であってカビではない、という注意書きがあります。
防腐剤を入れていないぶん、こういう説明が要るということです。
安全性について
ペットまわりで使うものなので、ここは事実だけを正確に書きます。for PET は次の試験を実施し、すべてクリアしたと公表されています。
- 急性経口毒性試験
- 皮膚一次刺激性試験
- 急性眼刺激性試験
- Ames試験(変異原性試験)
2025年1月22日には、日経MJのライフ・新製品欄でも取り上げられています。
「アルコールや合成香料、保存料を使わず青森ひばの精油と水で作ったペット用消臭スプレー」として紹介されました。
使用上、公式サイトに明記されている注意点は、使う前に容器をよく振ることです。
犬と暮らす家での、具体的な使いどころ
伺った使い方のうち、犬と暮らしていて「それは助かる」と思ったものを挙げます。
- 犬の体に直接使える — アルコールを使っていないため、体に吹いても差し支えないとのことでした。散歩前の虫よけとして、服だけでなく体にも使えます
- 洗濯の前に吹いておく — 毛布やタオルは、洗ってもにおいが残ることがあります。洗う前にスプレーしておくと落ちやすい、というのは知りませんでした
- シャンプーのあと、乾かす前に — 被毛が柔らかくなり、毛玉ができにくくなるそうです。乾いた状態でもつれを取るときにも使えるとのことでした
- 排泄物を入れるゴミ箱に — 蓋の裏にコットンを貼ってスプレーしておくのが開発者のおすすめだそうです
洗濯前とシャンプー後の話は、犬の服を洗う回数が多い家ほど効いてくると思います。
ラーテル犬舎で、実際に使ってみました
ここから先は、実際に使ったうえでの話です。
成分と試験の話は、調べれば分かります。
ただ、毎日使うものとして手になじむかどうかは、使ってみないと書けません。
青森ひばの杜さんに商品をお送りいただいたので、犬舎で実際に使ってみた感想を書きます。
香りの印象と、残り方
まず香りです。ワンプッシュ吹きかけるだけで、その場の空気がログハウスや森の中にいるような匂いに変わります。
個人的な使用感としても、これはかなり気に入りました。
ただ、ひとことで「いい匂い」と書くと誤解が出ます。
人工的な香料の匂いや、ファブリーズのような匂いとは、まったく別のものです。
とても自然な香りで、しかもきつくない。ふわっと優しく香る程度に収まっているのが、非常に好印象でした。
イメージとしては、ログハウスや森の中、あるいは木のお風呂に入っているときの感じです。
ひばの木そのものの香りがきちんとする。この一点だけでも、一度嗅いでみる価値があると思います。
香りは、思ったよりもよく広がります。ワンプッシュで部屋の中に行き渡って、そのあともしばらく残ります。すぐに飛んでしまって何度も吹き直す、ということはありませんでした。
気にして見ていたのは、犬の反応のほうです。犬は嫌なにおいがあると、くしゃみをしたり顔をそむけたりします。
うちの犬たちにはそういう素振りがなく、吹いた直後も特に気にしていない様子でした。
人が「ちょうどいい」と感じる香りが、犬にとっても同じとは限りません。ここは確かめておきたかった点です。
犬舎とトイレまわりで使ってみて
トイレまわりでも使っています。ここは分かりやすくて、においが戻ってきません。
香りが薄れたあとに、元のにおいだけが残るという感じがありません。だから、そもそも吹き直す回数が減ります。
使う量も、1回に吹く量が少なくて済みます。ワンプッシュで足りることがほとんどです。
ボトルの価格から想像するほど、減りは早くありません。コストパフォーマンスは良いほうだと思います。
犬に直接吹いて、ブラッシングスプレーに
犬に直接スプレーしてみると、毛がふわっと仕上がります。そのままブラッシングスプレーとして使えます。
うちでは、この使い方がいちばん出番が多くなりました。
消臭のために買ったものが、日々の手入れの道具になっている、という感覚です。
ブラッシングのあと、犬から森のような香りが漂ってくるのも、思っていた以上に良かった点でした。
犬舎という現場から見ると
多頭で暮らしていると、消臭は「気になったときにやること」ではなく、毎日の作業になります。
ラーテルにはイタリアングレーハウンドと日本スピッツがいます。
布製品の量が、普通のご家庭よりかなり多いということです。
その立場で消臭剤を見るときの基準は、実はシンプルです。
- 犬が舐めうる場所に使えるか — 床、ケージ、服。犬は結局そこを舐めます
- 香りが混ざらないか — 強い香りの製品は、続けて使うほど部屋の中で香りが重なっていきます
- 毎日使える価格か — 特別なときだけ使う消臭剤は、結局使わなくなります
成分が精油と水、という製品は、最初の2つにそのまま答えを持っています。
3つめの価格も、1回に使う量が少ないぶん、毎日使う前提で無理がありませんでした。
※においの感じ方には個体差・個人差があります。犬に体調の変化が見られた場合は使用を中止し、獣医師にご相談ください。
いぬsotodays 当日について
青森ひばの杜さんには、会場でのブース出店と、協賛の両方でご参加いただきます。
- 日程:2026年10月24日(土)・25日(日)10:00〜16:00
- 会場:ジ・アウトレット湘南平塚(神奈川県平塚市大神8-1-1)/入場無料
消臭剤は、におい自体を確かめてから買いたいものの代表だと思います。
ボトルを開けて、実際に嗅いでから選べるのは、会場ならではです。
イベント当日は、青森ひばの杜のスタッフから直接お話を聞くことができます。
また、ECサイトよりお求めやすい特別価格でのご提供も予定されています。
当日は、青森県産のりんごをフリーズドライにしたものも持ってきていただけるとのことでした。
犬のおやつとして、試食できる予定です。
7種類のりんごを食べ比べられるという、なかなか見かけないものです。
商品情報・お求め先
- 青森ひばの杜/運営:株式会社tappi.lab(代表取締役 園田孝一・2024年7月17日設立)
- 〒210-0007 神奈川県川崎市川崎区駅前本町11-2
- お問い合わせ:info@tappilab.co.jp / 050-6883-8806(平日 9:30〜17:00)
- 川崎市のふるさと納税返礼品としても取り扱いがあります
- Amazon でも販売を開始しています
公式サイト / マルチスプレー / for PET / Instagram @tappi.lab
※価格はいずれも2026年8月時点のものです(税込・送料無料)。最新の内容は公式サイトでご確認ください。
最後に
犬と暮らすことは、においと暮らすことでもあります。それ自体は避けられませんし、避ける必要もないと思っています。
ただ、その対処のしかたに、香りを足す以外の選択肢があると知っておくのは悪くありません。
青森の山で虫も腐敗も寄せつけずに立っていた木の性質を、そのまま部屋に持ってくる。そういう発想の製品です。

会場では、ぜひ一度嗅いでみてください。森のにおいがします。
いぬsotodays を応援していただき、ありがとうございます。

